【ルール解説】押し合いなし。アンコンテストスクラムってどういう状況?

ジャパンラグビーリーグワン2021−22Rd10 サンゴリアス対シャイニングアークスで、後半32分からスクラムのコンテスト(=押し合い)をしない「アンコンテストスクラム」のルールが適用されました。

その際に、負傷をした18番の選手の代わりに、入替されていた1番が戻り、7番の選手が退場し14人となって試合が再開されました。

あまり見慣れないこの状況に関して質問をいただいたので、アンコンテストスクラムの適用条件、その際の人数の状況について解説していきます。

フロントローは専門職

ご存知の方は多いと思いますが、フロントロー(プロップ、フッカー)は専門職で、誰でもできるというものではありません。

強靭な身体と日々の練習の上で安全にスクラムを組む事ができます。

近年選手の体格は大きくなっており、リーグワンではFW8人の合計体重は多くのチームで880㎏を超え、クボタスピアーズでは920㎏と世界的にもかなり大きい部類になるメンバーの試合もありました。

その8人同士がぶつかりあう最前線にいるフロントローの首、腰等にかかる負担を想像を絶しますね。

という訳で、様々な理由でフロントローがいなくなるとアンコンテストスクラムで試合を続行するというルールが存在するのです。

入替と交替

アンコンテストスクラムについて書く前に、知っておくと理解がしやすいルールを少し紹介します。

選手交代に関して、「入替」と「交替」の2種類があります。
入替=戦術的な選手変更
交替=負傷等による退出

となります。

入替は、いわゆる普通に選手を交代させたという状況で、一度外に出たとしても下記の交替への対応では再度フィールドに戻る事ができます。

「交替(一時交替)」が、アンコンテストスクラムには深く関わってきます。
「交替」は大きく分けると下記3パターンがあります。

②③の場合は、決められた時間内に競技に戻れなければ交替の扱いです。
①負傷
②HIA(頭部打撃による脳震盪のチェック)
③出血した際の止血

フロントローは各ポジション1人目の交替には必ず対応しなければならない

数年前までは、ラグビーの試合の登録人数は15人+リザーブ7名(基本的にはフロントロー2+その他5)の22人でしたが、現在では23人(フロントロー3+その他5)となっています。
※フロントローのリザーブが2名しかいない場合は22人となる。

出場登録されたフロントローは、登録時にどのポジション(1,2,3)でプレーができるか申告をしなければならず、フロントローとしてはあらかじめ申告したポジションでしか出場できません。(フロントロー以外での出場はOK)

試合成立の要件として、フロントローの各ポジションの1人目の交替には必ず対応できるようにメンバー登録をする必要があります

以上の2つをイメージできていると、この後の解説が理解しやすくなるかと思います。

アンコンテストスクラム

アンコンテストスクラムを簡単に言うと下記の通りです。

出す事のできるフロントローがいない

≒ 同じポジションのフロントローが2人退場する

⬇︎
組める人がいなくなって危ないからアンコンテストスクラム

こんなイメージです。

ここまでは簡単ですね。

冒頭のサンゴリアスvsシャイニングアークスでは、アンコンテストスクラムになった際に選手が14人になりましたが、このように「人数が減る場合」と「減らないで15人のままで試合が進む場合」の2つの状況が存在します

そこがわかりづらい部分となるので分けて解説していきます。

当該選手がグラウンドからいなくなっている状況で違う

入替と交替の部分で、交替の種類について3つ挙げましたが、当該選手がグラウンド上からいなくなる状況をもう少し詳しく分別します。

該当する状況は下記の6パターンとなります。

①不正なプレーによる負傷交替
②出血による一時交替(その後移行した負傷交替)
③HIA(脳震盪)による一時交替(その後移行した負傷交替)
④通常の負傷交替
⑤イエローカード
⑥レッドカード

 

同じポジションのフロントローが2人退場して安全にスクラムが組めなくなるというのが、アンコンテストスクラムの条件ですが、この2人が「どんな状況で退場したか」が人数の増減に関わってきます(図1参照)

上記①、②、③の条件が絡んでくると15人のままでプレーが続くことが多いです。

 

 

サンゴリアスvsシャイニングアークスのケース

今回のケースでは、一人目も二人目も負傷交替なので、上図1内赤文字の14人で試合が続行されました。

そして、例えアンコンテストスクラムであったとしても優先的にフロントローを出場させる必要があるので入替されていた1番が入り、7番が退出という形になりました。

 

 

過去のスピアーズの試合でのケース

アンコンテストスクラムが適用されたスピアーズの試合で最も印象に残っているのは2018−19シーズンの岡山で行われた第4節ホンダ戦ですね。

後半40分で24−29のビハインド。

この状況で、相手のフロントローに負傷→交替選手のイエローカードからのアンコンテストスクラムで相手は13人となり、ガラ空きのスペースにトライ+コンバージョンで31−29での劇的な勝利がありました。(※アンコンテストスクラムの場合、必ず8人で組まないといけない。)

私もスタンドで観戦していましたが、当時はあまり理解していなかったので「なんで13人になるの?」となっていましたね笑

後半は48分まで攻め続ける緊迫した試合でした。


⬆︎サッカーのPK戦かのように全員が後ろで見つめる中で決めてくれました。

※2023年4月16日に行われたリーグワン2022−23シーズンRd15 vsグリーンロケッツ東葛で、後半途中からGR側に負傷者が出た為、アンコンテストスクラムとなりました。

まとめ

アンコンテストスクラムになる大まかな状況としては、

・同じポジションのフロントローが2人退場する

人数が減る状況としては、

・普通のケガ x2
・イエローかレッドカードが絡む

以上を覚えておいていただけると良いかと思います。

 

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